未来美育

HOME >  未来美育  > クスノキのあるマンション
  • クスノキのあるマンション
  • 2022/11/11

ある知り合いから、「屋敷を取り壊して賃貸マンションを建てたい」とおっしゃっている地主さんがいるとご紹介いただきました。ご自宅にお伺いしてみると、洋館と日本的な平屋が隣り合わせになっている屋敷の前に、大きなクスノキが生えていました。

「立派なクスノキですね」と地主さんに伝えると、喜んで庭を案内してくださり、胸中を打ち明けてくれました。「街のためにシンボルとなるこのクスノキを残したい。何社も提案に来ているけど、どこも想いをわかってくれない。」と仰います。また、「マンションを建てることで、ご近所の方々や街に迷惑をかけたくない。」という想いも抱えていらっしゃいました。

クスノキは屋敷が建った昭和6年頃から、お施主様・そのご家族と共に時間を過ごしてきた大切な存在。田畑の中にクスノキとご自宅が写っているとても古い写真を見せながら、想い出も語ってくださいました。しかし、どの業者も口にしたのは、今のクスノキを伐採し、新しく植えるという提案。利益のみを追求した効率重視のものばかりだったそうです。

そんなお施主様のクスノキへの想い、地域への配慮を受け取った上で、当社ではクスノキを残しながら、地域にもとけ込むマンションを提案しました。そして、当社の提案・設計は進み、ご近所の方々への説明会にて、お施主様の想いを一生懸命伝えました。施工者にもその想いを共有し、十分に理解して慎重かつ丁寧に、工事を進めてくれました。

時は経ち、無事竣工を迎えました。マンションとして姿を変えた今も、大きなクスノキが残り、道を行き交う人々を毎日見送り、迎えています。かつて屋敷にあった庭からインスピレーションを受けて新たに植栽した木々たちも、季節によって違った表情を見せ、地域の人たちからも楽しんでもらえているようです。もしかすると、おばあさんが孫に「おばあちゃんが子どもの時からあるんやで」と話しているかもしれません。そして数十年後、「このクスノキは、おじいちゃんのおばあちゃんがお前くらいの時からあるんやで」と物語を引き継いでいるかもしれません。

この物件は、建築から10年以上経過した現在でも入居は途切れず、賃料は上がり続けていると聞いています。

一覧へ戻る